2015年1月30日金曜日

海へ遊びに行く前に知っておきたいこと

昨年読んだ漫画で最も印象に残っているのが「海獣の子供」(五十嵐大介 )という作品です。


本作に書かれていた「陸の生き物にとって海は死の世界であり、逆に海の生き物にとって陸は死の世界である。波打ち際は生と死を分かつ際であり、生者と死者が入れ替わる境界である。」(原文ではなく、こんな感じだったというだけ)という記述が何より印象に残っています。

僕はスキューバダイビング・スキンダイビングは年に10〜20回程度、磯歩きやビーチコーミングなら最近は月に1, 2回行くようになったかなぁというレベル。スキューバでのセルフダイビングはしませんが、スキンダイビングは友人と行ったりすることも。磯歩きもだいたい複数人で行くかな。そんな感じで海に足を運んでいますが、これまで僕自身が大きな事故にあったことはありません。

とはいえマリンレジャーに伴う事故は毎年起こっています。海上保安庁 マリンレジャー安全推進室のHPにあった資料「平成25年版 海難の状況と対策について〜大切な命を守るために〜(海上保安庁 国土交通省)」からスキューバダイビングとシュノーケリングの事故に関する情報を少しご紹介します。

まずスキューバダイビングの事故について。

平成 25 年のスキューバダイビング中の事故者数は 49 人で、昨年と比較すると 9 人減少しました。このうち死者・行方不明者数は 17 人であり、昨年と比較すると 5 人減少しました。また、スキューバダイビング中の事故者のうち死者・行方不明者の占める割合は 35%であり高い状況となっています。 
32ページ,(ⅲ)スキューバダイビング中の事故 より引用
(強調は引用者による)

平成25年 スキューバダイビング事故の原因
(32ページより引用)

過去5年間のスキューバダイビング事故における事故者数及び死者・行方不明者の推移
(32ページより引用)

事故原因の半数以上が自己の過失によるものですが、「他人の過失 18%」は3番目に割合が高く、自分が原因で他の人が事故にあう可能性も高いようです。自分のためだけでなく、いっしょに潜る人のためにもしっかり安全管理に努めたいですね。事故者数における死者・行方不明者の割合 35% はもっと高くなるかと思っていました。

続いてシュノーケリング事故について。スキューバと比較してどうでしょうか。

遊泳中、磯遊び中及びその他の活動中の事故のうち、シュノーケルを使用中に発生した平成25 年の事故者数は 52 人で、昨年と比較すると 5 人減少しましたが、このうち死者・行方不明者は 35 人で、昨年より 1 人増加し、過去 5 年間で最多となりました。また、シュノーケリング中の事故者のうち死者・行方不明者の占める割合は 67%と高くなっています。 
33ページ,(ⅳ)シュノーケリング中の事故 より引用
(強調は引用者による)
過去5年間(H21-H25)におけるシュノーケリング中の事故原因
(33ページより引用)

過去5年間におけるシュノーケリング中の事故者数及び死者・行方不明者数の推移
(33ページから引用)

平成25年のシュノーケリング中の事故者における死者・行方不明者の割合(死亡率)が67%になっており、スキューバの2倍近い・・・。よくスキューバよりシュノーケリングのほうが危ないという話を耳にしますが、本当だったんですね。そして事故原因の約8割が自己の過失によるものとなっています。スキューバ熟練者である友人が「スキューバとシュノーケリングは別物」と言っていました。「スキューバよりは簡単だろう」といって油断せず、安全管理に十分に気を配る必要があります。

スキューバやシュノーケリングの事故の現状についてはこんな感じでした。次に事故の防止策や実際に事故に遭遇した時の対応、事故後の対応について調べたのでここにまとめておきます。


事故防止策

天気の確認、健康管理など細かい点については海上保安庁 マリンレジャー安全推進室のマリンレジャーの心得にまとまっています。その中でも特に重要だと感じたのはやはりバディ・システムを活用し、単独行動を避けることでしょう。スキューバに限らず、シュノーケリングでも重要だと思います。

ダイビングの基本「バディ・システム」| All About
安全ダイビングの基本 第1回 バディ・システム | PADI JAPAN

バディを決めれば終わりというわけではなく、当然ながら水中・水上で行動中もバディに気を配る必要があります。事故が起こった際に、事故者がわかりやすく助けを求めるとは限りません。人は思っている以上に静かに溺れます。

ザブン! そのフィッシングボートの新米船長は、突然海に飛び込むと、ビーチに向かって一直線に泳ぎ始めた。 
「あの船長、君が溺れていると思ってるんじゃないかな」と、夫が妻に言った。そして「大丈夫ですよー!」と叫ぶと、手を振って「来なくていい」と合図した。それでも船長は懸命に泳ぎ続けている。「どいて!」 
 あっけに取られる夫婦をよそに、元ライフガードの船長は夫婦の3メートルほど後ろで溺れかけていた9歳の少女を助け上げた。ようやく水面に顔を出した少女は、初めて「パパ!」と声を上げて泣き出した。 

引用した記事中になぜ人は静かに溺れるのかについて理由が説明されていました。ざっくりまとめるとこんな感じ。
  1. 溺れかけている人は呼吸を確保するのに精一杯で声を出せない。浮き沈みを繰り返すので呼吸して声を出す前に沈んでしまう。
  2. 溺れかけている人は手を降って助けを呼ぶことはできない。顔を水面の上に出すために水中でもがき、体のバランスをとろうとするから。
  3. 溺れ始めてから20秒〜1分で体は水中に沈み始める。
ウェットスーツを着ていてもパニックになれば上記と同様に溺れるかもしれません。バディを決めて、自分との位置関係を把握する、バディの様子に気を配るなど、バディ・システムをしっかり機能させる必要があります。


事故が起こったときの対応

情報量が多くて全てをここには書ききれませんが、これについてはJAPAN SPORT COUNCIL(日本スポーツ振興センター)のHPから良い資料を見つけることができました。学校現場での水泳授業における事故対応を念頭に作られていますが、第Ⅵ章の「救助方法と応急手当」に記述されていることは海での事故対応にも共通しています。応急手当については細かい点も書かれているのでぜひ目を通しておきたいです。

学校における水泳事故防止必携(新訂二版)| JAPAN SPORT COUNCIL
学校における水泳事故防止必携(新訂二版) Ⅵ. 救助方法と応急手当 |JAPAN SPORT COUNCIL

図−34 溺者の救助の手順
(Ⅵ. 救助方法と応急手当 87ページより引用)

上記の図には抜けていますが、119番への通報(海上、海中での事故は118番で海上保安庁へ通報)も忘れずに。応急手当は状況に合わせて気道確保、人工呼吸、心臓マッサージ、AEDの使用を行う感じ。うーん、一度やってみないと緊急時に絶対動けませんね。AEDもできれば実物を触ってみたいです。

また、もし水中で溺者を発見した際はとにかく早く陸に上げる必要があります。水面に浮いたままできる応急処置は限られているので、陸か船にすばやく引き上げたほうが良いようです。溺者発見時に協力者がいれば、溺者を確保する人、船を呼びに行く人など手分けして行動できると良いと思います。

他にも個人でダイビング関係のビジネスをされている方のHPに情報がまとまっていました。下記ページの左側にある目次から「レスキュー編」を探して各項目をご参考に。

ダイビング講座 レスキュー編 SUGIPRO


事故後の対応

意外に情報が少ない事故後の対応について。今回は以前に事故に遭遇した僕個人の経験からの情報になります。

事故対応が一通り済んだ後、溺者の第一発見者や応急手当を行った人、現場の責任者などは、警察または海上保安庁の事情聴取を受けます。そのため、救助活動が終わったら、事故当時の情報を事情聴取前に整理しておく必要があります。ヒアリングされる情報については以下のとおり。(あくまで一例です。)

  • 事故前後の時間関係(出港、エントリー、溺者発見、通報、港到着などの時刻)
  • 事故当時の位置関係(自分、溺者、付近の関係者、船、事故現場などの位置や距離)
  • 溺者の事故前の様子(集合前、海に入る前の様子、エントリー後の様子など)
  • 安全管理の内容(バディの有無、事前のブリーフィングの内容など)

時間については、もし水中カメラを使っていた場合は写真に記録された撮影時間が参考になります。船の位置は搭載されているGPSでわかりますが、事故現場が船からどれくらいの距離にあったのかはその場にいた人たちの記憶が頼りです。

最近2, 3日暖かい日が続いた沖縄。天気が良いと海に行きたくなりますね。

大抵の場合、現場や病院で警察・海保に事情聴取を受けますが、場合によってはその後に海保の施設へ行き、再度事情聴取を行う場合があります。関係者から話を聞いて単なる事故なのか、何か大きな過失による事件なのかを判断するのが海保の仕事であり、そのために必要なより多くの情報(記憶によるところもあるので正確さには幅がでますが)を集めたいようです。時間はとられてしまいますが、人の生死に関わることなので可能な限り協力したいところですね。


安全管理は他人任せにしない

ダイビングやシュノーケリング、磯歩きなどを行う際に、同行する人の中に熟練者がいる、インストラクターがいるからといって安全管理を他人任せにしてはいけません。もしもその人が事故にあった時、対応するのは誰でしょう?

自分が事故に対応できるように知識を備え、可能なら安全講習を受けたり、レスキュー・ダイバー・コースを受講するなど、事前に救助と応急手当の方法を学んでおけるといいですね。また、海へ行く時に自分で天気や海況、干潮の時刻を調べたり、ブリーフィングの際に緊急時の対応や生息する危険生物を確認したりするのも必要です。海へ行く際は自発的に安全に関する情報を集め、事故を防ぐための行動を取ることが重要だと思います。

海を最大限に楽しむために、できることはやっておきましょう。


※情報の誤り、またはその他の重要・有用な情報(可能なら広く共有できるWeb上の情報)があればぜひお知らせください。

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