2013年12月21日土曜日

コユビミドリイシの産卵についてのあれこれ

5月30日・31日に造礁サンゴの一種 コユビミドリイシ Acropora digitifera の産卵を瀬底実験所にて観察してきました。


コユビミドリイシ Acropora digitifera


今回は観察の際に先輩方から教えていただいたり、自分で調べたサンゴの産卵に関する情報をいくつかまとめたいと思います。サンゴについて、サンゴの産卵について興味を持っていただければ幸いです。


コユビミドリイシの産卵の様子

サンゴの産卵は以前にも見たことがあるのですが、そのときは時間をかけて観察できませんでした。今回は写真や動画をガッツリ撮りたいと思い、月曜から金曜まで毎晩瀬底の実験所へ通いました。帰宅は深夜となるため、ちょっと寝不足になってしまいましたが・・・。

5月30日に観察したときの産卵の様子は以下の動画にまとめました。だいたい21時半くらいからスタンバって、22時くらいから産卵がスタートしました。ようやく観察できたコユビミドリイシの産卵。ポツポツと産卵が始まったころの様子から、ポコポコ産みまくる様子までを記録できました。



今回は水槽での観察でしたが、いつかはフィールドで見てみたいものです。



サンゴが放出しているのは卵だけ?

上で紹介した動画にもありましたが、今回のコユビミドリイシの産卵でポリプから放出されているのはバンドルという卵と精 子の両方を含む塊(というかカプセル?)になります。


コユビミドリイシのバンドル



顕微鏡で見たバンドル



崩れ始めたバンドル


ピンクっぽい球体が卵で、その隙間を埋める白色部分が精 子になります。ポリプから放出されたあとは水面へと浮上し、しばらくするとこのバンドルが崩れて卵と精子に分離します。今回は1つのバンドルに十数個の卵が含まれていました。


分離した卵と精 子


バンドルが崩れると卵は水面に浮いたままですが、精 子は拡散して海水が白く濁ってきます。テレビや新聞では「産卵」と表現されることがほとんどですが、ミドリイシ属のサンゴの場合は実際には卵だけでなく精 子も放出する「放卵放精」を行なっています。

ちなみにですが、今回紹介したコユビミドリイシはオスでもありメスでもある雌雄同体のサンゴでしたが、サンゴの中にはオスとメスが分かれている雌雄異体の種もいます。雌雄同体のサンゴは今回紹介したように卵と精子を同時に放出しますが、雌雄異体のサンゴの場合はオスは精 子のみを、メスは卵のみを放出します。




サンゴの一斉産卵、最初の報告はいつ?

サンゴの繁殖形式は大きく分けて2つあります。1つは今回のように精 子と卵を海水中に放出する放卵放精型。もう1つはポリプの中で受 精させて体内でプラヌラ幼生(サンゴの赤ちゃん)まで育ててから放出するプラヌラ保育型です。


放卵放精型のコユビミドリイシ


プラヌラ保育型のニオウミドリイシ
(白くて細長いのがプラヌラ幼生)


テレビでよく見るサンゴの一斉産卵については、1984年のScience誌に掲載された論文が最初の報告となっているようです。この論文では、1981年と1982年にオーストラリアのグレートバリアリーフにて一斉産卵を観察し、32種のサンゴが同じ時期に放卵放精を行ったこと、海水中で体外受 精を行いプラヌラ幼生まで発生が進んだこと、プラヌラ幼生が別のリーフまで広く拡散されることが報告されていました。

この報告以前には、46種のサンゴがプラヌラ保育型であることが確認されており、実験室レベルで卵や精 子の放出が観察されていたものの、サンゴの繁殖様式はプラヌラ保育型が主であると考えられていたようです。ところが、この論文を含むその後のいくつかの報告により、100種以上のサンゴが放卵放精を行うことがわかりました。

Harrison et al. (1984) Mass Spawning in Tropical Reef Corals. Science 223, 1186-1189.

Babcock et al. (1986) Synchronous spawnings of 105 scleractinian coral species on the Great Barrier Reef. Marine Biology 90, 379-394

サンゴの一斉産卵は今では割とよく知られている現象ですが、それが知られるようになってからまだ30年ほどしか経っていません。そのため、サンゴがどうやって月の周期を認識しているのか、どうやって他の群体とタイミングを合わせるのか、まだまだわかっていないことがたくさんあります。今後の研究成果がとても楽しみです。


その他参考になりそうな資料はこちら。どれも阿嘉島臨海実験所が発行している機関誌「みどりいし」の記事になります。

[PDF] ミドリイシサンゴ一斉産卵の謎はいまだに闇の中
[PDF] ミドリイシ属サンゴの卵放出量
[PDF] 阿嘉島周辺に生息するウスエダミドリイシの群体あたりの産卵数


今回は観察のために先輩後輩たちと毎日琉大から瀬底まで通いました。今日は産卵しないとわかったときの落胆は大きかったですが、僕ら以上に瀬底に通っていた先輩からは「今日こそは産むぞ!なんて期待せずに淡々と毎晩通う。これが大事!」とアドバイスをいただきました。わかってはいても産卵素人(?)の僕らは毎日期待せずにはいられず、ついにサンゴの産卵を観察できたときの興奮は今でも忘れられません。

そういうのを含めて、今回の観察はとても楽しいものだったし、サンゴという生き物についてより興味を深める機会となりました。年に一回しかないチャンスなので、もし産卵を観察する機会があれば皆さんもぜひチャレンジしてみてください!

0 件のコメント:

コメントを投稿